代表取締役社長・大橋 徹二

代表取締役社長
大橋 徹二

2015年度の重点活動項目を聞く

Q1:本年度(2015年度)の市場環境と、今後の重点的な活動について教えてください。

A1:前年度(2014年度)は、新興国における一般建機市場ならびに鉱山機械市場の需要低迷が想定以上に長引き、第4四半期には、中国市場などが一段と冷え込みました。この市場トレンドは2015年度に入ってからも継続しており、2016年3月をゴールとする中期経営計画の想定から大きく乖離する状況となっています。

しかしながら、建設・鉱山機械需要は世界人口の増加と都市化率の上昇を背景に、長期では増加していくとの考え方に変更はありません。コマツグループは「商品のライフサイクルコストの低減」などお客さまの総合的なメリットを訴求するビジネスモデルの展開を図るとともに、中期経営計画の3つの重点活動に着実に取り組むことで、経営環境の変化にもフレキシブルに対応できる体制を引き続き強化します。

    « 重点活動項目 »
  • イノベーションによる成長戦略
  • 既存事業の成長戦略
  • 土台強化のための構造改革

私たちは固定費の削減や原価低減、販売価格の改善などにひきつづき取り組んで収益性を向上させつつ、長期的な「成長の種」となるプロジェクトにスピードアップして取り組み、着実に成果を刈り取るよう、努めてまいります。

Q2:スマートコンストラクションについては詳しい話をお聞きしましたが、その他に、商品・サービスの領域において新たな価値創造を目指している商品として、何がありますか?

A2:商品の領域では、ICTショベル「PC200i」などの開発に加え、フォークリフト事業において建設機械とのシナジー効果による商品競争力向上に注力しており、2014年5月に発売した新型バッテリーフォークリフト「FE25」は、バッテリー式でありながら屋外や雨天での使用を可能にしました。現在、商品系列の拡大を進めています。

新型バッテリーフォークリフト「FE25」
新型バッテリーフォークリフト「FE25」

また産業機械他部門では、2014年に発売した小型ACサーボプレスとファイバーレーザー加工機の販売拡大を進めるとともに、主要コンポーネントの自社開発・生産を推進し、革新的な新商品の導入を目指しています。

サービスの領域では、 鉱山機械分野における「見える化」を推進するため、2015年4月、ゼネラルエレクトリック社との協力関係をさらに拡大しました。鉱山の稼働現場のビッグデータを収集・分析して、お客さまのオペレーティングコスト削減に貢献する活動を共同で行っていきます。

Q3:既存事業の成長戦略について、足元の進捗をお聞かせください。

A3:商品開発では、油圧ショベルやアーティキュレートダンプトラックなどの商品系列で、最新の排出ガス規制に対応した18機種を開発いたしました。2015年度は、新興国向け商品の企画、販売拡大を積極的に進めてまいります。

新興国向け油圧ショベル「PC200-8M0」(インドネシア)
新興国向け油圧ショベル「PC200-8M0」(インドネシア)

また、既存事業においても、ICTの活用は成長の大きなドライバーとなっています。「KOMTRAX」や「KOMTRAX Plus」の稼働データを分析し、お客さまの機械のライフサイクルコスト削減を提案することを通じ、補給部品をはじめとするバリューチェーンビジネスを強化します。

特に近年、建設・鉱山機械の稼働台数の増加に伴って補給部品ビジネスが拡大しており、2014年度は、部品の売上が過去最高を達成しました。この部品需要の伸びを着実に取り込むため、バケット、ツースおよび履帯などの戦略部品ならびにアタッチメントの拡充を行うとともに、リマン(コンポーネントの再生販売)についても引き続き供給体制の強化を図ります。また、製品・部品の販売サービスを担う代理店の競争力を向上させるため、代理店網の強化と人材育成に更に注力してまいります。

Q4:土台強化のための構造改革は?

A4:コマツグループの売上高は、2000年代初めに比べ約2倍に成長しましたが、固定費をほぼ一定に抑制しています。今後も成長とコストを分離し、適正な固定費水準の維持に努めるとともに、需要が大幅に減少している地域では、構造改革を継続的に実施し、固定費の削減を加速します。

連結売上高・固定費の推移

また製造原価についても、グループを挙げて更なる低減に取り組みます。

日本国内の工場で実施している「電力使用量の半減を切り口とした生産改革」では、2014年、粟津工場に省エネ性能と面積生産性に優れた新組立工場を設置し、2015年には同工場でバイオマスボイラー発電システムの稼働を開始しました。粟津の新組立工場では、省エネ、生産性の向上に加え、太陽光やバイオマスを活用した「創エネ」によって、購入電力使用量を約90%削減しています。

2015年度からは、新たな中期原価改善計画に着手します。その一環として、これまでの生産改革にIoT(Internet of Things)で見える化したさまざまな情報の「つながる化」をコンセプトに加え、安全性、生産性の飛躍的向上を図ります。具体的には工場における工作機械やロボットなど生産設備や生産ラインの稼働情報をIoTにより見える化し、共有データベースに集約します。集約された情報に基づき、生産工程の改善案を立案して、面積生産性向上、省人化、および生産リードタイムの短縮を実現します。また市場情報を工場に直結化し、お客さまの課題解決に工場が積極的に関与していく生産体制の構築を進めます。

補給部品ビジネスにおいては、2014年8月、栃木県の小山工場内に最新の物流機器や業務システムを導入した「新関東補給センター」を設立し、操業を開始いたしました。海外現地法人と国内工場との直結化を進め、補給部品在庫の削減、適正化を図ってまいります。

新関東補給センター
新関東補給センター