スマートコンストラクション推進本部長・四家 千佳史

スマートコンストラクション推進本部長
四家 千佳史

2013年6月にICTブルドーザーD61PXi-23を市場導入して以来、私たちは、ICT建機を活用してお客さまにどのような価値を提供できるかを議論してきました。

ICT建機は、精度の高い作業を実現するだけでなく、前後工程も効率化して、工期の短縮にも貢献できる。その方策をパッケージ化してレンタルするのが「スマートコンストラクション」です。スマートコンストラクションは、2015年2月から、日本で提供を開始しました。

2013年6月から市場導入したICTブルドーザーD61PXi-23
2013年6月から市場導入したICTブルドーザーD61PXi-23
2014年5月から市場導入したICT油圧ショベルPC210LCi-10(海外仕様)
2014年10月から市場導入した
ICT油圧ショベルPC210LCi-10(海外仕様)

現場の全てをインターネットでつなぐ「KomConnect(コムコネクト)

スマートコンストラクションでは、現場の建機だけでなく、工事が始まる前から終わるまでの全ての工程に関わるヒト、機械、土に関わる情報をICTでつなぎます。これらをつなぐプラットフォームが、クラウド型のシステム「コムコネクト」です。ここに、膨大な情報を蓄積し、解析、シミュレーション、提案まで行います。現場に携わる人は、これらの情報をインターネット経由でいつでも、どこでも活用できます。

では、スマートコンストラクションの動画をご覧ください。

現況の高精度測量と施工計画の作成

私たちのお客さまである建設・土木会社は、工事を請け負い、設計図(完成図)を手にすると、まず工事前の現場(現況)を測量し、現状と設計との差から実施すべき作業を見きわめ、工事計画を立案します。

測量は、2人がかりで1日に数百ポイント、数メートル単位の測量を繰り返します。2次元の現況図と完成図を見比べ、経験則で見積を作成する場合もあり、「実際に作業を始めたら、作業量が大きく違っていた」ことも多々あるようです。

私たちは、この測量にも最新のICT技術をご提案できると考えています。その一例が、Skycatch社の測量専用ドローンです。理想的な環境であれば、ドローンは15分程度全自動で航行することで、人手の何万倍のポイント(数百万ポイント)を、百倍レベルの精度(数センチメートルピッチ)で測量できます。更に必要であれば、レーザースキャナーなどを使い、高精度な3次元測量も可能です。

現況の測量と並行して、私たちはお客さまの2次元完成図をお預かりし、3次元図に変換する作業を請け負います。この完成図データと、現状との差が作業すべき場所となります。

コムコネクトによりお客さまは事前に、施工する範囲、形、土量などを正確に把握でき、さらにそれらデータをICT建機に転送すれば、現場で簡単な設定作業をするだけで、丁張り*レスで正確な施工ができるのです。

  • * 基礎マウンドや盛土切土を完成させるのに用いる目安の定規。等間隔に並んだ木杭とそれに水平もしくは斜めに打ち付けられた板で構成される。

ICT建機の稼働現場で、分かってきたこと

ICT建機は、既に日本国内で延べ約300台、800現場で利用されています。後ほどユーザーの皆さまにお話しいただく通り、丁張りの手間もいらず、経験の浅いオペレーターでも難しい作業をこなせます。

スマートコンストラクションを運用して分かってきたこともあります。ICT建機の位置や作業のデータを分析してみると、ベテランと新人で作業時間に差がありました。調べてみると、現場のどこからどこに向かって作業するかなど、長年の経験で培ってきたノウハウがあったのです。私たちは、そのような「熟練オペレーターの技」もコムコネクトに蓄積し、全てのオペレーターに提供したいと考えています。

ベテランオペレーターの皆さまからは、ICT建機のより良い使い方が、次々と寄せられています。コムコネクトは土木現場の匠の技を蓄積し共有するだけでなく、「改善」の次のサイクルを回すプラットフォームとなっていきます。

私たちもまた、改善を進めていく現場の声を聞き、そのお客さまに応えていかなくてはなりません。2015年2月に設立した「スマートコンストラクションサポートセンタ」は、工事経験者を増員し、各地のお客さまと密着することで現場の声に応える体制を強化しています。

スマートコンストラクションが描く「未来の現場」

多くの施工現場は完了後も、長期間続く維持保守工程が残ります。ICT建機による施工データは、全てコムコネクトに蓄積されていますので、必要に応じてお客さまや関係者の皆さまに提供するサービスも考えています。自然災害などで完成現場が破損した場合には、現況をドローンで測量して、災害前の完成データと比較することで復旧すべき範囲が即座に確認されます。私たちは、そう遠くない未来に無人のICT建機を遠隔制御して、災害発生後いち早く、安全に復旧を開始する現場を実現できると信じています。

今、世界中が、機械をインターネットでつなぎ、そこで生まれる新たな価値を模索しています。これがInternet of Things(IoT)です。私たちはIoTの進展を追い風に、スマートコンストラクションを進化させて、お客さまや世の中からイノベーションと評価していただくことを目指していきます。