森が広がる、未来が広がる
「コマツに入社して、まさかインドネシアで植林プロジェクトに関わるとは思いませんでした」。
そう話すのは、現在、建機マーケティング本部 グリーン事業推進部を率いる坂井睦哉。1992年にインドネシアの植林プロジェクトがはじまってから現在まで、ずっとこの活動に携わってきました。
東南アジアの熱帯林を支えるフタバガキ科の木は、木材資源としても重要で、さまざまな国に輸出されていました。しかし、伐採後の再生がうまく進んでおらず、いわゆる「熱帯林の減少」という問題に直面していました。そんな時、林野庁の熱帯林再生プロジェクトにコマツが手を上げ、現地に赴任したのが、坂井でした。
しかし、フタバガキ科は、人工植林には不向きな木です。
数年に1度しか種子を付けない上に、種子の発芽能力がすぐに失われてしまう。そのために苗を安定的に用意することができなかったのです。
試行錯誤の上、それまで難しいとされていた挿し木法によって安定的に苗木を生産することに成功しました。
その過程で何度も壁にぶち当たった坂井でしたが、そんな時、心の支えとなったのが、同じ目標に向かって苦楽を共にした現地の仲間たちの存在でした。
「海外で仕事をする時に何より大切なのは、バランス感覚ではないでしょうか。自分の考えを主張するのも大事だし、相手の考えを理解するのも大事です。そのバランスを取ることで、プロジェクトをひとつにまとめることができました」。その後、プロジェクトはインドネシア国内の4ヶ所に試験植林を広げ、植林の技術移転は急速に進んでいきました。
2006年、インドネシアの植林プロジェクトは一旦終了しました。しかし、コマツは、その後も、CSR活動の一環として、さまざまな活動支援を継続的に行っています。育苗の技術移転、挿し木の配布、実験林の保持管理、現地学生や各国からの研究者の受け入れなど。植林プロジェクトに着手した1992年から数えると、今年でもう30年にもなります。
フタバガキ科の実験林は、今ではもう見上げるほど大きく育ち、インドネシアの都市型エコ・ツーリズムの聖地となっています。週末になると首都ジャカルタから多く訪れる、ツーリングやハイキングの人々。
元々、フタバガキ科の木は、樹高が高く、森林の最上層を構成することから、インドネシアの人々にとっては、森林の象徴ともいうべき存在だったのです。
坂井はうれしそうに言います。「あんなに小さかった挿し木が、何十年か経って大きく立派に育って、それがインドネシアの人々の笑顔につながっていると思うと、こんなに感慨深いことはありません」と。
コマツは各地でこうした地道なCSR活動を行ってきました。
そして、創立100周年となる2021年、社員参加型の社会貢献プロジェクトである「One World One Komatsu」を立ち上げ、専用のプラットフォームを設けました。世界中のコマツ社員が国や言語の壁を超えて、パソコンやスマートフォンでひとつにつながり、持続可能な地球の実現という共通の目標に向かって活動しています。でも、けっして難しいことではありません。社員全員が、「水の使用量を減らす」「使わない部屋の電気を消す」といった、日常生活でできるあたりまえのことから、その活動は始まっているのです。
そして、今年もやってきた4月22日のアースデイ、地球環境について考える日。この日に向け、世界中のコマツ社員が、「アースデイ・チャレンジ」に参加し、地域における植樹や、公園や工場周辺におけるゴミ拾いなどのCSR活動を行います。
「とにかく続けることですよ。持続可能な地球を維持するためには、私たち一人ひとりも続けていくことが大事です」と、坂井は言います。
こうしてコマツの活動は、時を超えて、国境を超えて、職場を超えて、未来へと続いています。
あのインドネシアのフタバガキ科の木が、空に向かって緑の枝葉を大きく広げていくように。