森林は地球環境にとってとても大切な役割を果たしています。
空気をきれいにし、土地の浸食や洪水を抑え、健全な生態系に不可欠な動植物の育成環境を作りだしています。
また、気候変動をコントロールする上でも極めて重要な要素であると考えられています。
こうした脅威を前に、持続可能な林業を目指してきたコマツの取り組みは、これまで以上に重要になっています。
スマートな伐採方法、病害や害虫への迅速な対応、効果的な植林、そして貴重な天然資源に対する私たちの生活の影響を最小限に抑える方法などへのニーズが高まっています。林業は常に生産性や正確性、効率性が重視されてきましたが、これに加えて、森林の存続を脅かすことに対処することがますます重要になっています。
ジーモン・ウイツは、木材の伐採と搬出に必要な林業機械を提供するコマツフォレストで、フリートサポートを担当しています。
この仕事では、お客さまの課題を理解し、それを解決する技術や機械を提案することが必要です。近年、課題のーつに、小さな甲虫のコントロールがあります。
15年以上にわたり、ヨーロッパ各地のお客さまと協業しながら、ウイツは、ヤツバキクイムシ類による壊滅的な被害を目の当たりにしてきました。この甲虫は干ばつと高温で弱った樹木に病をもたらします。彼の活動拠点であるドイツでは、非常に暑く乾燥した夏が原因で、広大な森林地帯がこの害虫の攻撃を受けやすくなります。2023年の政府調査によれば、病気になっているか、枯れかけているか、あるいはすでに枯れている樹木がドイツ国内における全樹木の79%を占めています。
一度甲虫が木に寄生してしまうと、それを止める方法はありません。唯一できる対策はその拡散を防ぐことであり、長期的には、より高い気温や害虫に耐性のある樹木を植えることで森林の多様化を図ることです。科学者や自然保護活動家は、害虫を抑えるために、天敵となる生物を利用する生物学的防除や、場合によっては殺虫剤を使用するなど、複数の対策をしました。そして、害虫に寄生されたり弱ったりしている木を迅速に取り除く間伐は、極めて重要な対策の一つです。現在、林業作業者たちは甲虫の発生が確認される以前には類を見なかったほどの枯れた、あるいは枯れかけた木を伐採し搬出しています。
「長年にわたり、ドイツの年間木材搬出量は5,000万㎥ほどでした。しかし、この恐ろしい『猛獣』のせいで搬出量が急増しています」とウイツは解説します。
ドイツだけに留まらず、間伐は世界中で重要な対策となっています。さまざまな甲虫類やそのほかの害虫が世界中の森林に被害を及ぼしているからです。例えば、アメリカ西部とカナダでは、アメリカマツノキクイムシが1,800万ha以上の松林に被害を与えています。
また、エチオピアでは、イトスギアブラムシが約10万haのイトスギ林に影響を及ぼしています。
害虫の被害を受けた木々の間伐には、スピードと正確さ、そして緊密に練られた搬出計画が必要です。害虫の被害が確認されると、何千haにも及ぶ広大なエリアからその位置を正確に特定し、迅速に除去、被害を拡大させない安全な場所まで運搬しなければなりません。
作業はすべて遠隔地で行い、健康な木々への被害を最小限にしなければなりません。
コマツフォレストは、こうしたニーズに対処します。コンパクトで効率的に動き、環境への影響を抑えるよう設計されたハーベスターとフォワーダーに加え、作業者がキクイムシ対策を効率的に行える技術も開発しました。ウイツは言います。
「間伐作業のための機械だけではなく、これらの機械のスマート化も進めています。」
アプリケーションと機械に搭載されたテクノロジーで、森林管理者は対象地域を正確にマッピングし、伐採対象の樹木を特定、効率的な搬出ルートを策定し、いつでも進捗状況を把握できます。スマート林業と呼ばれるこうしたソリューションは、管理者やオペレーターがスマートな意思決定をするための支援ツールとなります。例えば、対象となる樹木がある場所までの最短ルートを選び、立ち入り禁止区画をデジタルフェンスで保護し、機械の稼働状況を確認するなどです。
これにより、ハーベスターのオペレーターは、画面上で対象の木にどれだけ近づいているかを数cmの誤差で確認できます。
また、甲虫の被害を受けていない健康な樹木に近づきすぎたり、走行ルートから外れたりすると、アラームが鳴るシステムになっています。
こうした機能により、植林や造林に始まり、樹木を切り出すまでのライフサイクル全体にわたって続く、より持続可能な森林管理が可能になり、被害のない健康な森林の生態系を維持することにも役立っています。
間伐と択伐は病害の蔓延を防止するだけでなく、山林火災を予防し、若木が成長する空間を作りあげ、自然の棲息環境に対する影響を最小限に抑え、水資源の管理にも有効です。樹木の伐採は、森林が成長する中で、水が染み込みやすい林床を保護し、若木や多様な動植物への影響を抑えることのできる工法で行います。
林業界は需要に応じた産出をしながら、こうした目的を達成するためにテクノロジーの活用にますます注目しています。人工衛星やドローンで収集したデータを分析することで、最適な走行ルートを決め、森林の資源量を確認し、最適な植林計画を策定することができます。データを機械にアップロードすると、適切な木を伐採しようとしているか、コースを外れていないかを各種センサーで探知しオペレーターに伝えます。
世界最大級の林業機械メーカーの一つであるコマツは、社会と環境の両方にとって重要な資源である森林を守るという使命を理解しています。ウイツと彼の仲間たちは、持続可能性と生産性のバランスが取れるよう、林業を営むお客さまと深く連携し仕事に取り組んでいます。
ウイツはこう語ります。
「私たちは、この重要な課題に対して、多角的なアプローチを取っています。機械とテクノロジーを活用し、環境への悪影響を最小限に抑え、生産性と安全性を最大化することを目指しています。社会のニーズに応える林業の実現には、最良の機械とソリューションが必要です。私たちは、その両方を提供することに全力を尽くしています。」