2021年にはじまったコマツの月面建機の開発。それは、月に長期滞在可能な基地を建設するという、人類の宇宙への夢を実現するためのものです。しかし、過酷な月面環境において、地球上と同じように稼働できる建機を開発することは、決して容易な道ではありません。
現在、月面建機プロジェクトチームは約十名のメンバーで構成されていて、それぞれが専門分野での知識と経験を持っています。
今回は、このプロジェクトに携わり、さまざまな難題に立ち向かおうとする3名に、開発への思いについて聞いてみました。
*左から、ハード担当:堀江、チームマネージャ:杉村、ソフト担当:菊池
*左から、ハード担当:堀江、チームマネージャ:杉村、ソフト担当:菊池
こうして3人の夢とともにはじまった月面建機の開発プロジェクトですが、メンバーは未知の宇宙分野に向かって日々どのような業務を推進しているのでしょうか?
杉村は、「計画に沿ってプロジェクトの一つひとつを着実に進行することが重要です。そのために、ハードウェアとソフトウェアの両面による研究開発を日々行っています」と言います。
(堀江)私は、ハードウェアを担当しています。月面で建機を動かすための課題を抽出して、その対策を探っています。建機は、鉄でできた重い車体を油圧の強力なパワーで動かす製品です。しかし、建機を月に持っていくことを想定すると、質量に伴う輸送費の観点から、アルミニウムやチタン、プラスチックなど、軽い材料の割合を高めなくてはいけないので、とてもチャレンジングです。
動力についても、地上では主にディーゼルエンジンを使用してきましたが、月面ではそうはいきません。宇宙でも比較的容易に得られる太陽光エネルギーを活用する必要があります。
また、バッテリーも、一般的なリチウムイオン電池はそのままでは使えないので、コマツの電動化技術を活かし、次世代電池を活用するなど、さまざまな検討をしています。
(菊池)私は、ソフトウェア担当で、月面での稼働のシミュレーションを行っています。まずは、地上の建機をそのまま月面で動かしたらどうなるかを知ることが、開発の第1歩でした。たとえば、掘削のシミュレーションを行ったところ、ショベルの車体が掘削中に前後に浮いてしまうことが分かりました。地上では、ショベルの重さが地面からの反力をしっかり支えてくれるため、効率的に掘削できますが、月面では重力が地球の6分の1しかないので、ショベルの重さもそれに応じて軽くなってしまいます。
そのため、同じように掘削することが難しくなります。こうした課題もシミュレーションを通じて検証し、月面に適した建機の操作方法や形状の研究を進めています。