コマツに入社したのは1990年です。最初は建設機械の研究開発部門に配属されました。その中で地雷除去作業を支援する機材の開発に携わっていたのですが、建機を応用して平和に貢献する機材に高い興味を持ちました。そして15年ほど前、地雷除去を専業にする部署を立ち上げることになったんです。上司一人と、私一人。建設機械を活用した社会貢献ができるので、これはやるべきだと思いましたね。
私たちの仕事は、まず現地の人々に対人地雷除去機の使い方やメンテナンス方法などを教えることでした。初めは苦労の連続でしたが、根気よく教えていると、現地のエンジニアが、「これは俺の仕事だ」と、自覚と責任を持ってくれるんです。5年10年かかりましたけど、嬉しかったですね。国というのは、こうやって人が成長して、どんどん良くなっていくんだなと思いました。協力してくれたJMAS(日本地雷処理を支援する会)の存在も大きかったです。地雷除去の知識が豊富で、復興に携わった経験も多い。現地ではCMAC(カンボジア地雷処理センター)の協力も欠かせませんでした。一緒に歩んできた歴史が、今でも大きな支えになっています。
私たちの仕事は、地雷原を調査して、地雷を除去したあと道路や学校、そして農地をつくり復興させることです。そんなことを地道に続けていると、10年以上前に建てた学校の生徒さんが、大学生になっているんです。これは驚きました。地雷原のあったところから、よく大学に通えるようになったな、と。親御さんと話をすると、彼らがいかに大変な思いをしたかがわかるんです。戦争の中を生き抜くことに精一杯で、大学なんて夢にも思わなかった。やっと平和になって、子どもが勉強を頑張っている。よし、それなら貧しくても、なんとしてでも大学に行かせてやろう、と。もちろん子どももそんな親の姿を見ているんです。だから本当に一生懸命、働きながら勉強しているんですね。
昔、上司に言われたんです。1年かけてやる仕事は1年分の価値しかない。10年かけてやった仕事は10年分の価値があるんだ、と。私たちはプロとして、責任を持たなければなりません。仕事を始めて、続けて、終わらせること。やるんだったらしっかりやろう、と。だからもし後輩が入ってきたら、「この仕事、好きか?」って聞きますね。好きこそものの上手なれ。現場が好きな人が向いているんじゃないですか。本当にそれが大事だとなったら、しっかりやれ、と背中を押してくれる。それがコマツらしさだと思います。