デザイン・フィロソフィーとは、デザインの根底にある思想や理念のことを言います。
製品やサービスを考える上で何を重視するか、デザインによってどのようなユーザー体験を創出したいか、といった基本的な指針を示すものです。コマツでは、以下の3つをデザイン・フィロソフィーの軸にして、建機の外観から細部にわたるデザインにまで反映しています。
デザイン・フィロソフィーの具体的な考え方、そしてその考え方をどのように製品に体現し、コマツらしさを創造しているのか。
コマツのデザインはどんな未来に向かうのか。2人のデザイナーに聞いてみました。
デザイン・マネージャー
鈴木泰之
チーフ・デザイナー
木下隼人
Q:コマツのデザイン・フィロソフィーの核心は何ですか?
鈴木:人間中心のデザイン、つまり建機に関わるすべての人が中心にあるということです。建機を操作する人はもちろんのこと、建機を整備する人、建機が働く現場の周りで生活している人など、製品に関わるすべての人をデザインで応援したいと思っています。
木下:デザインとは、色や形などの見た目だけではなく、設計そのものだと思っています。ですので、背景にはつねに人を想う優しさがあり、人にどう貢献できるかということを意識しながら、一つひとつをデザインしています。
Q:人間中心設計において、大事にされていることは?
鈴木:人に寄り添うデザインですね。つまり、操作する人が使いやすく、ストレスフリーになることが重要です。そして、力強くて、仕事ができそうなデザインを追求しています。そうすることで、操作する人には1日楽しく仕事をしてほしいと考えています。
木下:安全であることにとことんこだわりたいと思っています。たとえば、建機の運転席の手すりを目立つ色にしたり、滑りにくい床材を使用するなど、基本的な安全性は当然クリアした上で、シートの座り心地などの快適性もさらに高めていきたいと思います。
疲労の蓄積を抑え、集中力を維持することで、安全な作業につながると考えているからです。
Q:デザインがブランド・アンバサダーとして果たす役割は何ですか?
鈴木:お客さまにとってもっともコマツを感じていただけるのは、やはり製品に触れた時だと思います。建機の外観や使用体験が、ブランドの評判に直結していると考えています。ですので、いつの時代にもコマツらしく、かっこいいデザインでありたいと思いますし、お客さまとともに持続可能な社会に向かっていくというコマツのブランド・アイデンティティー「Creating value together」を発信するデザインでありたいと考えます。
Q.機能とデザインの関係について、どうお考えですか?
鈴木:建機なので、機能や性能を満たすのはあたりまえだと考えています。その上で、機能や性能をスタイリングデザインにどう翻訳するかが大事ですね。たとえば、私がデザインしたWA470-10(WA475-10)は、新しいトランスミッションを採用し、燃費と作業効率を画期的に高めたのが最大の特長です。ですので、外装にプラスチックを使用して、力強いキャラクターラインを入れて、フォルムをすっきりさせるなどして、従来の建機にない新しさを感じてもらえるようなデザインにしています。
木下:たとえば、「きれい」と「美しい」は違うと思います。「きれい」とは単に形がまとまっていることですが、「美しい」とは形だけでなく、機能性、考え方や想いまでデザインに反映され、すべてが整った状態になっていることだと思います。
私は、美しいデザインを目指しています。
Q:コマツらしいデザインとは?
鈴木:ひとつのキーワードの例になりますが、「Intelligent athlete」という言葉を使っています。パワフルなデザインだけではなく、知的さや人への優しさが感じられるデザイン、そして人や社会との共生を意識したデザインを目指しています。
そうすることで、幾つかの競合メーカーがある中で、コマツらしさがより一層際立つのではないかと考えています。
Q:特にやりがいを感じたデザイン業務は?
木下:操作レバーのデザインを多く手がけてきました。操作レバーは、人間と建機をつなぐとても重要な接点になります。
スイッチや動作の要件が機種ごとに異なるため、機種ごとに形状や握り方が異なってきますが、手の動きを考慮しながら丁寧に一つひとつの形を整えていく工程に、大きなやりがいを感じていました。